『天才スピヴェット』

「泣き方だけが分からない」のコピーは泣かせる

「泣き方だけが、わからない」のコピーは泣かせる

 

作品名:『天才スピヴェット』
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
キャスト:カイル・キャトレット(テカムセ・スパロー・スピヴェット)
2014年11月26日@としまえん

 

アメリカ西部の牧場に住む10歳の天才少年が、権威ある科学賞の授賞式に出席するため、家族に黙って1人で大陸を横断する物語だ。原作は作家、ライフ・ラーセンが2009年に出版した『T・S・スピヴェット君 傑作集』。

西部→大陸横断→東部。構成は極めて単純だが、ファミリーの心の裏に屈折する心理は複雑だ。彼らが住むのはモンタナ州のパイオニア山地の谷間にある牧場。

100年遅れて生まれてきた、身も心も考え方も純度100%のカウボーイの父、人生の大半を小さな生き物を顕微鏡で観察し、それを種と亜種に分類することに費やしてきた昆虫博士の母、アイドルになることを夢見る姉のグレーシー、学校の成績は悪いものの、射撃や投げ縄が得意なパパ似の二卵性双生児の弟レイトン、犬のタピオカ。これがフルメンバーだ。

しかし、ある日、弟のレイトンが銃の事故で死んでしまったことから、すべてが変わる。T.Sはパパに愛されたレイトンのようにはなれないし、先生も学友も理解してくれない学校でも孤立している。

そんなときにかかってきた1本の電話。T.Sが発明した磁気車輪がスミソニアン博物館の栄えあるベアード賞を受賞したという。スミソニアンなら科学者としての自分を必要としている。T.Sはワシントンに行くことを決意する。

監督は「アメリ」や「デリカテッセン」を撮ったフランス人のジャン=ピエール・ジュネ氏。想像力で未来を切り開く子どもや大人になっても子ども心を忘れない大人を描く。ハリウッドが嫌いで、物語の舞台はアメリカなのに、撮影は全編カナダで行われた。

米国で撮影することを嫌っている。理由はハリウッドの権利関係にあるという。日本では「作品は監督のもの」と思われているが、米国ではそうではない。著作権は脚本家、編集権は製作会社、配給権は配給会社に属する。

編集権は製作にお金を出した製作会社に所属するものであり、監督は文字通り、撮影現場を取りまとめる現場監督に過ぎないという。ジュネ氏はそれに抵抗している。

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