「里山・真庭」

 

向かって左が太田市長、右は川村、井上氏

向かって左が太田市長、右は川村、井上氏

 

真庭発信 トークショー「大都会×大杜会」―里山真庭(まにわ)の夢を語る―がとっとり・おかやま新橋館で開催された。真庭市は岡山県北部で、鳥取県に接した中山間地域。

2005年3月31日に当時の真庭郡の勝山町、落合町、湯原町、久世町、美甘村、川上村、八束村、中和村および上房郡北房町の9町村が合併して誕生した。人口4万6000人。岡山県の約11.6%を占める県下最大の自治体だという。

とりわけ同市を有名にしたのは木質バイオマスによる「里山資本主義」を掲げた挑戦。中山間地域のモデルとして注目されている。あいさつした太田昇真庭市長によると、昨年4月に稼働した「真庭バイオマス発電所」(真庭市目木の県営真庭産業団地)の運営は「順調」で、年間売上高は20億円で、初年度から利益を計上できるという。

同発電所の出力は1万キロワットで、未利用材を主燃料にした木質バイオマス発電所では国内最大級。フル稼働時の年間発電量7万9200メガワット時は一般家庭2万2000世帯分に相当する。「燃料の木材供給が成り立つためには広範囲から集める必要があったが、軽トラックで走り回りながら持ち込んでいる」(太田市長)という。

真庭市を有名にしたのは2013年7月に出版されたベストセラー『里山資本主義』(藻谷浩介/NHK広島取材班)。取材班の中心がNHKエンタープライズ プロデューサーの井上恭介氏。「地域が本当に主役になって、そこにあるものを使って、木のエネルギーを使っているのが真庭。町の人たちがエネルギー源を運び入れるところが嬉しい。木の枝や皮など整備されていない木くずがエネルギーになる」と語った。

バイオマスは、「バイオ」(=生物、生物資源」と「マス(mass=量」を組み合わせた造語。再生可能なバイオマスは糞尿、木くず、廃油、紙くず、生ゴミ、下水汚泥などいろいろある。

知らなかったのは「CLT」という工法でビルが建てられていること。「Cross Laminated Timber の略称で、ひき板を並べた層を、板の方向が層ごとに直交するように重ねて装着した大判のパネルを示す用語。1995年頃からオーストリアを中心に発展してきた新しい木質構造材料」(日本CLT協会)。

井上氏がNHKエコチャンネルのブログで「ロンドンで考える里山資本主義」と題した番組製作記の中で、CLT工法で建てられた「10階建ての木のビル」を紹介している。

『里山資本主義』については結構批判が多い。本は読んだ。ただ、太田市長や井上氏の話を聞いていても、「話が美しく、おいしすぎる」印象をぬぐい切れなかった。里山資本主義はマネー資本主義への対抗軸として打ち出されたものだろうが、底があまりにも浅く、対抗軸になり得ないからだ。

それ以上に問題視されているのは里山資本主義の中心的存在である真庭市の製材会社「銘建工業」が製造販売した木質ペレットの焼却灰から1キログラム当たり最大2600ベクレルの放射性セシウム137が検出されたこと。同社は北欧の木材から集成材を生産している。チェルノブイリ原発事故の影響を受けたものだという(中国新聞2012年5月30日付朝刊)。

これを基に、「里山資本主義」は重要な事実を隠蔽した情報操作を行っていると指摘する向きもある。真庭市長や井上氏の話しぶりからは特に悪ぶれたところもなく、堂々と胸を張ったトークだった。真偽のほどは分からないが、何ごともすべてを鵜呑みにしてはならないということだろうか。

 

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