森林講座「新素材・セルロース」

 

新素材「セルロース」の開発研究の成果について解説する林徳子氏

新素材「セルロース」の開発研究の成果について解説する林徳子氏

 

休憩時間も説明攻めの熱心な受講者

休憩時間も熱心な受講者の質問攻めに

 

これがうわさの「スギナノセルロース」(左1%、右5%)

これがうわさの「スギナノファイバー」(左1%、右5%)

 

森の科学館

森の科学館

 

国立研究開発法人 森林総合研究所(茨城県つくば市)は毎年、多摩森林科学園(八王子市廿里町=とどりまち)の森の科学館で森林講座を開催している。その中に最近話題のセルロースナノファイバー(CNF)に関する講座があったので、参加した。題して「植物だって鋼鉄に負けない!―新素材としてのセルロース―」。

「CNFは、植物の基本骨格を成しているセルロースをほどいて再構成した繊維材料。鋼鉄と比べて重量はわずか5分の1と軽いが、5倍以上の強さを持ち、さらに熱による変形がガラスの50分の1と小さいなどの優れた特性を有している。軽い構造材料として飛行機などで使われている炭素繊維に比べて6分の1程度のコストで生産できるといわれており、実用化への機体は大きい。

この分野の研究は日本がリードしており、2015年9月には森林・木材科学分野のノーベル賞ともいわれるマルクス・バーレンベリ賞が、組織をナノレベルまで細かくほぐすのに必要なエネルギー量を大幅に減らすことに成功した東大の磯貝明教授ら日本の研究者3人に与えられた」(現代用語の基礎知識2016年版)

同書によると、「静岡県がCNF産業創出へ産官学の推進組織を発足させるなど、実用化に向けた動きが活発化している」という。

技術的なことはよく分からなかったが、森林研がCNFに懸命に取り組んでいる理由はよく分かる。日本の国土の70%は平野の少ない中山間地域。山が多い。森林の面積は増えていないものの、「森林蓄積量」(森林を構成する樹木の幹の体積のこと)が増加しているのだ(森林・林業学習館)。

「日本の森林では面積は、ほぼ横ばいで増減はありません。しかし、森林蓄積は年々着実に増加しており、昭和41年と比べて2.6倍に増えています。特に人工林(=育成林)では5.5倍に拡大しています」(同)

要は戦後造成した人工林が成長して、本格的に利用期を迎え、何とか需要を拡大しなければならない時期に来ているということだ。人工林の樹種別蓄積1位はスギの58%。2位はヒノキで22%。2つで8割を占める。

そこで林野庁が取り組んでいるのが国産スギを活用した「セルロースナノファイバー製造技術実証事業」だ。講座の本当の狙いは恐らくこちらだ。森林総研は国産材を原料とするチップをアルカリ蒸解によりパルプ化したのち、酵素と汎用の湿式粉砕機によりナノ化して、CNFを一貫工程で製造する技術を開発した。

製紙会社など民間ベースでもCNFの実用化に向けた開発競争が行われており、当分フィーバーが続きそうだ。

 

 

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