『パナマ文書とメディアの役割』

 

「パナマ文書」報道との関わりを話す朝日新聞の奥山記者

「パナマ文書」報道との関わりを話す朝日新聞の奥山俊宏記者

 

共同通信の澤康臣記者

共同通信の澤康臣記者

 

ゲスト:奥山俊宏氏(朝日新聞東京本社編集委員)
澤康臣氏(共同通信社特別報道室次長)
テーマ:パナマ文書
2016年6月9日@日本記者クラブ

「パナマ文書」(Panama Papers)はタックスヘイブン(租税回避地)を利用した税金逃れの顧客データ。パナマの大手法律事務所モサック・ファオンセカ(Mossack Fonseca)の内部データが何者かにハッキングされ、それがジョン・ドゥ氏(John Doe、名無しの権兵衛氏)によってドイツ・ミュンヘンの日刊紙・南ドイツ新聞の記者にリークされた。

リークされた文書の総数は1150万件。21万4000件のオフショア法人の名前が含まれ、総データ量は2.6テラバイト。ジャーナリズム史上最大のリークとされる。

これまでのリーク事件では2010年にウィキリークスで米外交文書が大量に漏洩されたほか、13年には米国家安全保障局(NSA)元職員のエドワード・スノーデン氏が米秘密文書を英ガーディアン紙などにリークしている。

ジョン・ドゥ氏は5月6日、匿名のまま声明を発表。自らについて、「直接であれ契約であれ、どこかの政府や情報機関のために働いたことは、過去にも現在にも一切ない」とした上、「超富豪層の腐敗が資本主義を崩壊させ、革命を引き起こす可能性がある」との見通しを示した。その革命はデジタルによるものだという。

データの分析は現在、米ワシントンに本部を置く非営利組織「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)が当たっており、5月10日にはパナマ文書に示されている21万社の法人名や個人名を公表した。

ICIJの調査報道に日本から参加しているのが朝日の奥山記者と共同の澤記者の2人。奥山氏はICIJの会員でもある。

「パナマ文書」の調査報道でも朝日と共同が社を超えて取材協力しているのが最大の特徴だ。1つのテーマについてライバル同士が協力することの困難はあるものの、調査報道で実験的に試みることになったのが今回の例だ。海外では既にICIJで始まっているものの、日本では初めて。

奥山記者は会見で、「海外には調査報道のコミュニティーがあり、大会には記者が多数集まる。日本の記者や編集者もそういう場にもっと顔を出すことによって、新しいアイデアを取り入れた報道ができる」と述べた。

奥山記者はまた、「私見によれば、日本国内においても、そうしたコミュニティーが十分形成されているとは言いがたい。社の壁や、マスメディア記者とフリー記者の壁を越えて、そうした場を設けたほうが、より良いジャーナリズムをつくることにつながるのではないか」と指摘している。

・米国では調査報道記者・編集者協会

・国際的にはグローバル調査報道ネットワーク

・日本では報道実務家フォーラム

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