おいしさとは何か?

 

農学部一条ホール前の立て看

 

東京大学農学部の第53回公開セミナーが11日午後1時30分から、同学部一条ホールで開催された。応用生命化学専攻の東原和成(とうはら・かずしげ)教授が「いい香り、不快な匂い、何が違う?」、同三坂巧(みさか・たくみ)教授が「おいしさとは何か?」、応用動物科学専攻の竹内ゆかり教授が「暮らしに役立つ!?ほ乳類フェロモン」について話した。

・食品を摂取すると、知らず知らずのうちに色々な感覚が活性化される。食品からは様々な情報が入力される。これに呼応し、五感を始めとする種々の感覚を感知し、総合的に食品の価値を判断している。

・「おいしい」と思う過程を明らかにしたい。なぜ我々が肉がおいしいのか、乳がおいしいのか、ケーキがおしいのか。何でおいしいと感じるのか。これが我々の研究テーマ。

・我々の舌の上には「味蕾」(みらい)という味を感じる器官が存在している。味蕾は味細胞と呼ばれる細胞で構成されており、この細胞が食品の味を感じている。口腔内には甘味、苦味、塩味、酸味、旨味の5種類の味細胞が存在する。

・普段食べている食品には技術が盛りだくさん。瓶詰め、缶詰、レトルト。スーパーの常温コーナーに置かれている。冷凍・冷蔵しなくても日持ちがするのは適切に加熱滅菌処理をして菌が死んでいるからだ。びんやかんはナポレオン時代に発見されたが、レトルトは1968年にボンカレーが最初。軽くて丈夫で長持ちする。

・カット野菜もそう。家庭でキャベツを刻んで袋に入れると、すぐに黒くなって腐る。メーカーのカット野菜は数日間日持ちしておいしさはそのままだ。きれいに塩素で洗って店頭においたが、最近は紫外線と保存水を利用する。水で洗わなくてもいい。洗浄の方法が変わった。いずれにしろ、きれいに洗って数日間長持ちする。しかも数種類混ぜて売るから売れて売れて仕方がない。もうかって仕方がない。

・明治の「おいしい牛乳」。ちゃんと根拠がある。加熱殺菌するが、酸化する。牛乳は乳脂肪があるので酸化をすると嫌な匂い物質が出てくる。匂い物質が出ると、まずいと感じるので、加熱殺菌する前に酸素を減らす。酸素を減らした状態で加熱殺菌すると、酸化が抑えられて、嫌な匂いが少なくなる。だからおいしい。1~2日経つと、匂いが少ないので、しばらくおいしい。プラス50円なので価値があるのでなかなか売れない。技術が入ってきちっとおいしい。

・自分が食べられるかどうかを「味」を使って判断するために、何を食べるかを決めるという意味ですべての生き物は「味」を感じている。脊椎動物は似通った仕組み。虫は別の仕組みを持っている。食べていいものを判断するために味覚を持っていて、必要な感覚だということも言える。

・匂いは数十万種類あると言ったが、味は5種類。砂糖を口に入れると甘い味がする。世界共通だ。レモンや酢を口に入れると酸っぱい。食塩は塩っぱい味。野菜の苦味は苦い。この4つの味は古くから別の味で、独立の味として認識されていた。アミノ酸の味である旨味は欧米では認知されていなかったが、2000年に入ってセンサーが見つかって国際的に認知された。

・甘味。糖類。エネルギーになる。甘い味はエネルギーになるので食べていい味。アミノ酸が示す旨味はたんぱく質が分解したもので、これも食べていい。果物くらいの弱い酸味はエネルギーになるので食べるが、強い酸味は腐っているシグナル。塩に関してはミネラル補給しなければならない。味噌汁くらいの塩味は食べるが、海の水くらい濃いとナトリウム取り過ぎ、ノー。苦味は一般的にノー。甘味、弱い酸味、弱い塩味は積極的に食べる。強い酸味、強い苦味はNG。動物はたべていいかを判断するために5種類の味をフル動員しながら、食べられないものは吐き出す。

・味を感じる入り口の「味覚受容体」が2000年に米国人によって開発された。2000年以降に入り口に位置する受容体の正体が分かった。これに伴い人間の評価システムも進化した。舌の上に味細胞という味を感じる細胞を持っていて、これで味を感じる。舌の上で味を感じる細胞は非常に少ない。先端にぱらぱら、奥のほうにちょっと集まっている。わずかしかない受容体は神経を伝わって脳にいって味として認識している。こうした仕組みが分かったのもつい最近だ。

 

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