「ハイテク関連サービスが重要」=新駐日イスラエル大使

 

ベンアリ駐日イスラエル大使

 

ゲスト:ヤッファ・ベンアリ新駐日イスラエル大使
2018年1月18日@日本記者クラブ

天皇陛下に信任状を提出し30時間後の会見だった。これで正式に大使として着任したことになるという。”肝っ玉母さん”を思わせる風貌が印象的な新駐日イスラエル大使。「自身はイスラエル生まれだが、両親はポーランド出身。母はホロコースト(ユダヤ人大虐殺)から危機一髪で逃れた経験があり、あのとき母が逃げてくれなかったら、今の私はなかった」(会見リポート:毎日新聞外信部長 小倉孝保)

会見ではイスラエルと日本の共通点として、「天然資源に恵まれず、人への投資で国を立て直した」ことや、「周辺国の脅威にさらされている」ことを挙げた。「その上で、事前に細部まで気を配り周到に準備する日本人と、現場での適応力の高いイスラエル人が協力することで、様々な分野で高い効果が期待できると訴えた」(同)

36年間の生粋の職業外交官。外務報道官、報道部メディア広報課長のほか、EXPO2010上海国際博覧会(中国)のイスラエル副委員長やEXPO2012年麗水国際博覧会(韓国)のイスラエル委員長を務めた。直近の2014年から17年は外務省次官補、経済局長を務めた。

・イスラエルと日本は地理的には遠いが、とっても緊密な関係にある。イスラエルは小さな国で、その間をとっても大きな国に囲まれている。どこにあるのかなと世界地図の中で見つけたいとすれば、虫眼鏡がないと見つけられないぐらい小さい。片や日本は世界第3位の経済大国だが、自分では小国と思っている。なぜならグルリと大国に囲まれ、脅威を受けているからだ。

・しかし、2国とも大きな経済を築き上げてきた。共通しているのは天然資源がないこと。恵まれていない。両国共通の最も重要な資源は人材である。

・2カ国とも古代文明を持っていたことで数千年にわたる発展の歴史を持ってきた。イスラエルは今年独立を新たにしてから70年年、うち66年間は外交関係を樹立してきた。

・両国は自らの国を立て直したというか、作り替えたことで大成功した。両国とも人材に投資してきた。66年間の何が新しいか。似たもの同士の国。国としての厚み。

・世界経済フォーラム(WEF)によると、首脳の相互訪問、協力宣言合意、日本企業が革新的な技術を求めたいと積極的にイスラエルにアプローチを深めている。

・世界のトップ10イノベーション国を発表。イスラエルは第3位、日本は第8位だった。将来、イノベーション、創造性などでシェアするものが大である。特にエコシステムの中でシナジー効果を狙っていけるポテンシャルは大だと考えている。

・直近20年くらいのイスラエルの経済の発展をみても、どこからみても経済的に強力なマーケットを持っている。地図で見るとどこにあるか分からない小さな国だが、世界中の多くの多国籍企業の関心を集めている。300社強が研究開発センターを置いている。うち220社は米企業、残りはヨーロッパ、最近日本企業も入るようになっている。

・政府間経済対話も積極的で、日イ経済対話を開催できた。経済大臣の相互訪問も行われた。最新では昨年10月に初めて発効した投資保護協定を締結した。両国企業の進出を保護する。枠組みを規定している。

・この3年間、日本企業がめきめきイスラエルに進出してきている。今も続いている。そうは行っても東京ーテルアビブ間の直行便は開通していない。ぜひ開通したい。もっと来てもらいたい。日本とはまた違った美しさがある。魅力的なので自分の目で確かめてもらいたい。

・2017年の日本人観光客は2倍に増えた。50%アップだ。韓国との直行便は2008年から開通している。中国との交流もこの2年間多く、企業も増えている。

・科学者同士がブレーストーミングを行って各種会合を重ねており、SFの世界のように興味深いことが展開している。科学の協力でものづくりが行われ、製品が開発されることですばらしい。日本の産業界にとっては大きな意義をもたらすと考える。

・世界の貿易はここ数年間大きな変化に見舞われている。原材料や工業製品など物品の交易が中心だったが、サービス貿易にドンドンシフトしつつある。観光、運輸、金融サービスだけでなく、特にイスラエルにとって重要なのはハイテク関連のサービス=知識の移転だ。

・さらにイスラエルと日本の関係づくりが進むと、とても有効になる思う。貿易収支を均衡させるというポテンシャルを達成できるからだ。経済力が強いということは背後に強い外交関係がるということでもある。

・すべての人は平和を望んでいる。共通の願いだ。政治安定があってこそ経済発展があり、経済成長がもたらされる。経済発展をもたらしたいのであれば、背後に強力な政治安定が必要だ。

・経済的状況が良いということも大切だが、人生に欠かせない1要素があると思う。それは「幸福感」ということだ。感情的にも精神的にも安定していないとだめだ。自分が仕事を見つけるのなら、大好きなことを見つけなさい。朝起きて、またこの仕事ができると嬉しいなと思える仕事を見つけて欲しい。

・ランキングの中で国民の「幸福度」についてはトップカントリーの1つになる。イスラエルのが国民は自分をとても幸せに思っている。私は人生で人間は何を持ってハッピーとするのかを調べている。正しいキャリアを選ぶと言うこと以外に、「自分を信じる」ことではないか。やればできることを自ら示す。達成感があれば、それを明確に感じることができる。もっと大きな幸福になる。大きな自己充実感だ。成功を収める一大重要要素は幸福感、Happinessだと思う。

・なぜイスラエル大使が「幸福感」ということを言うのか。人生で喜びを得る1つの理由は異文化間を知ること、学ぶこと。違った国に赴任するたびにいろんなことを学んできている。日本とイスラエルとの比較もそうだ。活動がさらに盛んになることを願っている。学ぶこと大である。

・イスラエルの文化も学んでもらいたい。どんなに活力があるのか。違いがどこにあるのかを知るのも楽しい。似てる点もたくさんある。

Q:米大使館のエルサレム移転計画について首脳間に見解の食い違いがあるように思えるが?また、どういう影響を懸念してるのか?

A:答えは簡単。アメリカ大使にお聞き下さい。エルサレムは3000年にわたって唯一の生地、唯一の首都と見なされてきた。だからといってイスラエルとパレスチナの関係は変わることはない。存在する権利をお互いに認め合いたい。イスラエルはパレスチナ側の権利は認めているが、パレスチナ側はまだ認めていない。パテスチナはこの概念を認めることで未来があると考える。

Q:中国の「一帯一路プロジェクト」に積極的に参加しているようだが、どういうプロジェクトに関心を持っているのか?知財大国、スタートアップ大国、R&B 大国 として積極的だが、油外交をしている日本とアラブとの関係でイスラエルはどう思うか?

A:アジアインフラ投資銀行(AIIB)は私のほうから積極的に絶好の機会であり参加すべきと首相に提言してきた。資金的な観点からもすばらしい。AIIBを通じて投資にも参加したい。中銀総裁のおかげで外貨準備が増えた。GDPの3分の1に匹敵する。投資案件に関心持っている。小さな国ではあるが、強力でもある。経済や金融の面で及ばない点もあるので、革新力に富んだソリューションを提供する点で貢献したい。イスラエル企業としても複数の企業が係わる国際的プロジェクトに参加する良い機会にもなる。理念、政策と呼んでも良い。

昨年、一帯一路サミットが開かれたときに、習近平主席に招待され参加した。ビジョンの発表はすばらしかった。国際プロジェクトにイスラエルもパートナーとして係わっていく。お相手として日系企業も入るだろうし、第3国で日系企業と連携することも考えられる。一帯一路はあくまで経済ビジョンであると聞いた。その背後に中国の生産性というのもあると思う。近隣はもちろん、ヨーロッパのみならず、アフリカまで視野を広げて経済力をアップさせようとしている構想だ。今の時代は帝国主義の時代ではない。植民地の時代でもない。これまでと全く違うグローバル化の時代に入ったと思う。結集しあってお互いの環境を良くする時代に入ったんだと思う。

具体的な案件の分野を挙げてみたい。水の管理、環境問題関連、エネルギー、再生可能エネルギー、農業。アグリテックは非常にすばらしいものをイスラエルは持っていて今年も展示会がある。カザフスタンでは質の高い食料を生産する、生産した物が長期間持てる、ポストハーベストの技術も十分駆使する。アグリ関連の技術を第3国でAIIB案件として積極的に加わっていきたい。今のところアジア中心+シルククロード基金があるが、これまでの大半は日米主導のADBとの協調融資となっている。世銀。

立ち上がりつつあるプロジェクトもある。アラブボイコットは昔のことで、今や無いんですね。アラブ諸国とも経済関係持っていますし、経済関係は様変わり。数年前からエジプトとは連携協定結んで、ヨルダンとは日本のcmも絡んでいて農業を中心に合意を締結している。訓練に日本の資金を使い、それにイスラエルも絡んでいる。パレスチナとも交流がある。イスラエルは中東の諸国が抱える難しい問題を解決できるように導いていくアシスト。現地においてどこでも協力に応じられるように準備している。

イスラエルが最近、天然ガスが発見された。選択資産であるが、それをめぐって最初に結んだ合意の相手国の1つはヨルダン。

あと1つご紹介したい。イスラエルーヨルダン間の橋梁。

Q:イスラエルとパレスチナ間の仲介役の心づもりは?軍事装備の対日供給意欲は?

A:エリコ(Jericho、ジェリコ、パレスチナ自治区、世界最古の町=写真と旅日記)を農業地帯として開発する案件はまだ完了していないが、大きな成功を収めて欲しいと期待している。ヨルダンにつなげるアクセスロートが想定されており、その道路を通して中東につなげることができる。パレスチナの産業ハブもできるのではないか。平和と繁栄の回廊と呼ばれている。

イスラエルは最先端の防衛産業を持っている。防衛装備もある。いろんなソリューション提供できる。必要であれば共同生産も考えられる。試作段階のものもある。試作段階も含めて協力したい。

Q:サイバー防衛で日本市場はどのようなポテンシャルがあると見ているか?

A:この分野でも開発の実績積んできたことを誇りに思っている。防衛だけではなく、様々。オリンピックも是非協力したい。日本企業も関与している。1月末にイスラエルでサイバー攻撃などに関する大きな会議が予定されている。日本からも大代表団が参加の予定だ。特別セミナーも開催予定だ。交流させれば大きなシナジー効果が出ると思っている。

Q:ユダヤ人社会がその国の政策に影響を及ぼしているようだが、政府間ばかりではなく、民間社会の存在が大きな力になっている。日本ではそうでもなさそうだが、どうか?ユダヤ人社会、ネットワークはどの程度のものか?

A:学者チックにお答えしたい。外交にはいろんなツールがある。媒体もあるし、レバレッジもある。日本ではたくさんあるツールの中で、2つレベレッジがある。両国間の整合性の高さ。マーケットをとっても産業をとっても経営方法、何を達成したいかという希望をとっても整合性が高い。2番目も驚かれるかもしれないが、2カ国の文化は違っているけれども、調和的な非常に良い連携関係が続いている。

日本人の性格は非常に細かいことをきちんと行う。精密に綿密に、事前に十分抜かりなくプランニングなさる国だと思うが、私自身も完璧主義者なのでこの辺はすんなり来る。一方、イスラエル人はその場主義というか、即席現場主義で解決することが多い。事前に綿密にプランを立てるとか安定してずっと物を売るとかはあまりやらない。幾つものオプションを一度に持ち合ってくる。ときによると2つの方向から問題を解決しようとなるわけで、ユダヤ人のことはジョークにもなっている。「1人のユダヤ人は常に2人の違った見解を持っている」。問題の対処の仕方が違う。持ち合って最終的にうまく解決することが多い。

2つに異なった文化が一緒になることで結果としてより良い製品が生まれる、より良い成果物が生まれる。一方は非常に綿密にプランニングを行い、もう一方は即席でイノベーションでその場で思い付く。そこで協力し合えば1+1=3になる。2つの文化が交わることでシナジーが生まれる。これが良いことだと思う。政府がまず傘を提供しましょう。その下で民間が遣る気を出す。これを実現するのが私の仕事だ。これが真の外交だと思っている。

世界を牛耳っているのは強いユダヤ人の力だというのは根拠のない通説かもしれないが、これは残しておきたい。

 

 

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