「我々は労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった」

カテゴリー: 働き方改革, 東京日誌Ⅱ

2018/12/10  20:06


スイスの作家マックス・フリッシュが50年前に述べた言葉


ゲスト:指宿昭一(いぶすき・しょういち)弁護士
テーマ:日本の労働を誰が支えるのか
2018年12月10日@日本記者クラブ

低賃金、長時間労働などに苦しむ外国人労働者の救済に携わってきた指宿昭一弁護士が外国人労働者の現状と改正入管法について話した。

・外国人労働者は約128万人。このうち留学生(資格外活動)は約30万人(全体の約20%)、専門的・技術的分野は23万8000人(同18.6%)、技能実習は約26万人(同20.2%)。資格外活動と技能実習生が56万人と多くを占めている。特別な技術も高度な技術も持っていない。農業だったり縫製工場だったり食品加工業だったり、留学生だったらコンビニの店員、居酒屋の店員。いわゆる単純労働といわれている分野で働いている。

・単純労働は政府が使っており、私はこの言葉は間違っていると思う。熟練していない労働という意味で非熟練労働者という言葉を使うべきだ。

・単純労働は禁止されている。この分野の労働はないということになっている。ここが大きな歪みの始まりだ。入れないといいながら実際には入れている。これをバックドアからの受け入れとかサイドドアからの受け入れと社会学者の先生たちは言っている。おおきな歪みの原因だ。

・技能実習制度は発展途上国への技術移転による国際貢献を目的として創設され、約26万人が在留(2017年10月)。企業が外国の現地法人等から受け入れる「企業単独型」と中小企業に受け入れる「団体監視型」があり、団体管理型が17年末時点で96.6%を占めている。

・1989年の入管法で在留資格「研修」が創設され、93年に1年間の技能実習制度が作られた。95年に技能実習の期間が2年間に延長となった。「研修1年」+「技能2年」=3年間。

・これらの制度は開発途上国から外国人を招いて各種の技能・技術等の習得を援助・支援して人材育成を行い、技術移転による国際貢献をするという建前で始まったが、実際には中小零細企業が安価な労働力を確保するために作られ、運営されてきた。

・研修・技能実習制度の下では「時給300円」といった最低賃金をはるかに下回る残業代しか払われなかったり、旅券の取り上げ、強制貯金、パワハラ、セクハラなどの人権侵害が相次ぎ、国際的にも国内的にも厳しい批判が出された。

・問題事例の特徴は、①残業時間が300円(最低賃金法、労基法37条違反)②賃金手取り額が3~4万円(不当な家賃・光熱費控除)③多額の渡航前費用の徴収(ベトナムの場合100万円)④送出機関による保証金徴収・違約金契約と保証金(禁止されているが、なくならない)⑤人権侵害的なルールの強要(日本人との交際禁止、同国人との交際禁止など)⑥セクハラ・パワハラ・暴力禁止⑦強制帰国(要求をする実習生に対する制裁、労災隠し)⑧「ものが言えない労働者」(実習生から労基署への申告件数はたったの89件=17年)-など。

・実習生は自分の国を出る際に送り出し機関にベトナムの場合100万円を支払っている。貧しい国だからそんなお金は持っていない。借金をしてやってくる。借金をして少しでもプラスになるお金を持ち帰ることを考えている。

・保証人の付いた違約金契約も結んでいる。ルールを破ったら保証金没収。違約金も請求される。例えば、以下のような場合が多い。失踪してはいけない。恋愛してはいけない。妊娠してはいけない。日本人と話してはいけない、同国人と連絡を取り合ってはいけない。日本で権利を主張してはいけない。問題があった場合、管理団体か送出機関に相談しなさい。

・われわれ弁護士や市民団体が廃止を要求してきて2009年の入管法改正のときに省令で禁止したが、なくなっていない。人権侵害的なルールの強要が保証金や違約金で担保されている。

・なぜこんな問題が起こるのか。それは技能実習制度に構造的な問題が存在するからだ。政府は「きちっと取り締まれば問題は解決できる」と主張しているが、この説明は間違っている。まず移動の自由がない。技能実習計画のために3年間同じ職場で働く。労働力確保の制度にすぎず、本人たちも技能を学ぼうと持っていないし、受け入れ側も中小企業の苦しい経営の中でボランティアで国際貢献やろうとは思っていない。良心的なところもそう。

・また管理団体は実習実施機関(各企業・農家)から1人の実習生につき3~5万円程度の管理費を徴収している。実費ならともかく、それを越えたものも多く、利権になっている。

・技術移転を通じた国際貢献は真っ赤なウソ、真っ赤なウソだ。法務省だって知っており、受け入れ企業もみんな知っている。最近は報道機関や一般国民も知っている。本当の目的が安価な労働力確保であることは最早周知の事実だ。

・正面から外国人労働者を受け入れるべきだとの議論が始まっている。国連も「ビジネスと人権に関する指導原則」を採択し、ワコールやしまむらも全取引企業に実習生への人権侵害がないような取り組みを始めている。

・改正入管法が成立した。正面から受け入れる方向を示したのは前向きなことだとは思う。89年施行の時点でやるチャンスはあった。なぜ30年前にやらなかったのか。少なくても20年前にはできた。遅すぎた改正であることは指摘しておきたい。

・疑問はなぜ技能実習制度を廃止しないのか。自民党のある議員は「これまではカラス(技能実習)は白い(国際貢献)と言い張ってきたが、カラスは黒い。黒いものは黒いと言ってちゃんとした制度を作る」と言っていた。制度としてはすぐにでも廃止すべきだ。2年後には見直しが行われるので、そのときまでには国会で審議してもらいたい。

・「特定技能1号」は家族帯同が認められず、在留期間の上限が5年とされている。特定活動1号の5年間、家族帯同を許さないのは家族の統合を壊すものであり、人権上認めるべきではない。技能実習から特定技能1号への移行が認められているが、その場合、最大10年間、家族帯同が認められないのはおかしい。

・特定技能2号に移行できれば家族帯同ができ、在留期間の上限もなくなるが、2号に移行できる業種は14業種中2業種のみであり、しかも厳格な基準で行われると説明されている。これは問題だ。

・受け入れの数が職種、在留資格の更新・変更の基準が法務省の裁量に任せて、密室で決めることができる。今の入管法の仕組みもそうなっており、その延長線上で設計されている。公開の審議会などで毎年審議を行って、基準の透明性・客観性を確保すべきだ。

・現在の外国人は人権が侵害されやすい状況にあり、特に入管法の在留管理が人権基準からみて非常に不適切な形になっている。収容期間は100年。上限がない。法務省の裁量だ。

・今回の入管法は欠陥だらけ。外国人労働者に対する人権侵害や悪質なブローカーに対する規制が決定的に欠けている。改善していかなければ特定技能制度は第2の技能実習制度になってしまう。

 

登壇した指宿昭一弁護士

 

スイスは現在、外国人率が約25%を占める。かつて同国は労働力不足から主にイタリア人労働者を受け入れたが、短期間で大勢の外国人労働者が増えたため、国内で外国人労働者の排斥運動も起こるなど移民問題に直面した。

しかし同国は国の方針として、一定期間労働者として滞在したのちに家族の呼び寄せも認めるなどの移民政策を取ったため、結果的に外国人移民がうまく溶け込んだ国の1つになった。

安倍政権は技能実習生を5年間続けた人には在留期限延長を認めるとか、滞在期間を延長しても10年間は家族の帯同を認めないとの方針を打ち出した。

このことは「我々は労働力を呼ぶつもりだが、人間は呼ばない」と言っているのも同然だ。労働力を持った人は人間であり、人間は常に家族を帯同しており、それを切り離すことはできないということである。安倍政権は血の通わない移民政策を取ろうとしている。

 

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