技術で勝ってビジネスで負けた「ドローン」はリチウムイオン電池の二の舞か

 

 

DJIジャパンブース

 

社名:DJI JAPAN
住所:東京都港区
設立:2013年8月創業
従業員数:200人
事業内容:マルチコプター・ドローンの企画、研究、製造。販売および輸入

DJI(中国・深圳)は2006年に創業。民生用ドローン市場で7割のシェアを有している。

”オール群馬”の石川エナジーリサーチ社製

 

石川エナジーリサーチ(群馬県太田市)にあるドローンメーカー。農業用マルチローター「アグリフライヤー」は次世代農業を担うロングライフ産業ロボット。すべてがオール群馬製だと説明員は言う。

 

マゼックス

 

マゼックス(大阪府東大阪市)は2015年より、農業をはじめ産業用ドローンの開発・製造・販売を行っている。国内で生産している。

当社のドローンは①抜群の飛行安定性能②産業ヘリに劣らない散布品質③今までにない低価格を実現ーの3拍子そろった農薬散布ドローンだ。

重量10.5kg。片手で持てた。広げた状態でそのまま軽トラに積載できる。

 

XAG社(中国・広州市)

XAG社は中国・広州市に拠点を構えるドローンメーカー。農園にはびこる害虫を退治するためにドイツの農薬メーカー、バイエルクロップサイエンスと協力して、自動運転で農薬を散布するドローンの開発を行っている。

他にもイームズロボティクス(福島市)やナイルワークス(東京都渋谷区)、秋田で作られた国産ドローンの東光鉄工UAV事業部(秋田県大館市)など10数社がある。

「ドローン」が広く社会に知られるようになったのは2015年4月22日の首相官邸無人機落下事件からだ。発見されたドローンは中国DJI社製のファントム。福井県小浜市在住の元航空自衛隊員が「反原発を訴えるため」に飛ばしたとして自首し、逮捕された。

それまではドローンと言っても明確な定義はなく、「電動モーターで回転するプロペラが4つ以上あるコンピューター制御された小型無人航空機」を指すことが多かった。2010年頃からモデルショップやネット通販で売られており、空撮動画の撮影が中心だった。

この事件を契機の一つとしてドローンの法整備が本格化し、15年12月10日に施行した改正航空法により、小型無人機の飛行が規制された。国の許可なしに住宅密集地や空港周辺で飛行することを禁止。違反した場合は50万円以下の罰金が科された。

プロペラの「ブーン」という風切り音がハチの羽音に似ていることから、雄バチを意味する「ドローン」と呼ばれるようになったと言われている。確か当初はUAW(Unmanned Aerial Vehicle)と呼ばれていたが、いつの間にかドローンに変わった。こちらのほうが呼びやすいのだろう。

日本ドローンコンソーシアム(JDC)会長の野波健蔵千葉大学名誉教授が10月10日の第8回農業Weekで明らかにしたところによると、ドローンは現在以下のようである。

2016年は産業用ドローン元年

2018年は物流ドローン元年

2022年は大都市上空をドローンが飛行する元年

3年後の22年には日本の大都市上空をドローンが粛々と飛び交うことができる制度設計が終わるというのである。

産業用ドローンといった場合、16年、17年も日本では農業分野が90%のシェアをとっていた。18年はトップながら減少し始めている。19年も多いが、むしろ「空の産業革命」といわれる物流に主力がシフト。22年には東京の空を自由に飛べる条件が整う。「ドローンの車検制度ができて、免許制度も整う」(野波氏)という。

東京の上空をドローンが粛々と何百機も飛ぶ時代があと3年後にやってくるという。2020年3月29日から羽田空港国際線増便のため、練馬区を含む首都圏上空を飛来する新飛行経路の運用が決まったようだ。地下鉄の中刷りでも既成事実として盛んに広告している。

しかし乗客の耳はイヤホンに塞がれ、ほとんどの目もほぼ全員がスマホの操作に忙しく、広告をきちんと読んでいる人はいなさそうである。上空に飛行機が飛ぶというだけでも気が狂いそうなのにドローンも飛び始めるとどうなるのだろうか。

黒岩祐治神奈川県知事は2019年9月2日、ドローン社会の実現に向け「ドローン前提社会ネットワーク」を立ち上げた。「ドローンをトラクター並みにマルチユースで農機具として使う。ブラックボックスでいい。目標だけをインプットしたらあとは勝手にやってくれる時代がそこまで来ている」(野波氏)という。

日本が得意なのは農薬散布。特にヤマハ発動機が16年11月に新発売した産業用無人ヘリコプター「フェーザー・アール」は無人ヘリ市場最大の32リットルの薬剤を搭載することができるため、無補給で4ヘクタールの農薬散布を可能とし、散布作業の圧倒的効率化・省力化を実現した。

2015年には国内の水稲作付け面積の42.5%(ヤマハ推定)はヤマハの無人ヘリによって散布されたという実績を誇っている。韓国や豪州のほか、米国でも17年からカリフォルニア州ナパバレーでワインブドウ畑への商業散布が行われたぐらいだ。

しかし同無人ヘリは1機当たり1000万円以上もするなどしてコストがかかり、費用面での負担軽減が課題となっていた。同社もより小規模な作付け地をカバーするドローン「YMR-08」(希望小売価格275万円)を18年6月に限定販売し同秋から本格的に投入し始めている。

2005ごろまでは有人ヘリが農薬散布の主流だったが、そのころから無人機に変わった。シングルコプターがマルチコプターにシフトした。今やマルチコプター(3つ以上のローターを搭載した回転翼機、マルチローターともいう。無人航空機を指すことが多い)が主流である。

今や世界のドローン市場はホビー用で大成功した中国のDJIが産業用に転化している。月産10万機。年間だと100万機を超える。「これだけ作ればさまざまな技術改良や技術革新も生まれるし、ユーザーからのクレームの殺到しているはずだ。これをベースに修正しているだろう。産業にも生きているはずだ」と野波氏は指摘する。

「農薬散布を世界に先駆けてドローンで実施したのは日本。ヤマハ発動機の貢献だ。ドローンの農薬散布で再び世界市場のシェア1位に戻ってほしい」(野波氏)と、技術力で勝ってビジネスで負けるのはリチウムイオン電池と同じように思えてならない。

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