近くまできたついでに奈良・東大寺の大仏さんも見学
ファミリーロッジ旅籠屋伊賀店に泊まった。泊まった翌日が天気かどうか。曇っていたり雨でも降っていれば、そのまま車を東京に走らせたが、どっこいこんな好天である。
何処へ行くか考えることもなかった。やはり奈良の大仏さんしかない。少し戻るが、名阪国道に乗って奈良を見物することにした。考えてみると、奈良見物は修学旅行の時以来である。
私は神戸時代に一度、長澤蘆雪展で蘆雪の絵を見に来たことがあるが、そのままとんぼ返りだった。奈良の街を歩いたことにはならない。妻も中学校の修学旅行で一度来たことがあるが、それ以降は初めてだという。
幸いロッジの朝は早い。朝食を済ませてロッジを出たのは午前8時30分だった。10時すぎには奈良の街を歩いていた。
それにしても奈良は何と鹿の多いことか。奈良公園の鹿は国の天然記念物に指定されていて多数生息している。人慣れしている鹿も多く、愛くるしい瞳やふさふさの毛並みは可愛い。公園の鹿は誰かが管理しているわけではなく、あくまで野生動物だ。
しかし、近年この鹿によってケガをした人が増えているのも事実だ。奈良県によると、2018年度のケガ人数は過去最悪の209人。13年度に比べ約4倍に急増した。同年度に骨折以上のケガをした8人のうち5人は外国人だったという。
ケガの多くは「鹿せんべい」を与える際に指をかまれてしまう軽いケガだが、鹿同士のけんかなどに巻き込まれる場合もあるという。骨折のような大きなケガは、雄鹿の発情期である9~11月に集中しているようだ。
また雌鹿も出産期の5月中旬から7月まで、子鹿を守るために気性が荒くなり、危ないという。
人間のケガを防ぐのも大切だが、鹿の生態環境を維持していくのも重要だ。鹿はあくまで野生動物であることを理解した上で接する必要がありそうだ。
東大寺(奈良市雑司町)は何が有名かというと、8世紀前半に創建され「奈良の大仏さん」として知られる本尊の盧舎那仏(るしゃなぶつ、国宝)だ。ユネスコにより1998年に世界遺産にも登録されている。
華厳宗の大本山で、聖武天皇が国力を尽くして建立した寺でもある。大仏は青銅で鋳造され、鍍金が施されていた。その後損傷を被り、その都度修理されている。
大仏の両手は桃山時代、頭部は江戸時代のものである。大仏殿は創建以来、治承4年(1180)と永禄10年(1567)に兵火に遭っており、今の建物は江戸時代に建て直された3度目のものである。
横幅が約3分の2に縮小されているものの、それでも木造建築物としては世界最大級の規模を誇っている。
ところで、大仏殿を支える1本の柱に大きな穴が空いていることはご存じか。
この柱は樹齢約250年ほどの米松(べいまつ)で、柱の直径は120センチ。これに横幅30センチ、縦幅37センチの大きな穴が空いているのだ。奈良では、柱をくぐり抜けると、「無病息災」「祈願成就」のご利益があると言われているとか。
この柱くぐりに挑戦している人のほとんどは外国人観光客。最近では待ち時間も発生しているという。この日もかなりの人がこれに挑んでいた。やはり特に子どもや女性が多かった。
普通の男性はちょっと難しいかもしれない。柱の穴に身体が挟まった場合のことを思うと、気分が萎える。「柱の穴に身体が挟まってしまったら、ます向こう側に抜けだそうとしてはダメです。余計に身体が挟まってしまい、しまいには本当に抜け出せなくなります。取りあえず、穴に入ってきた方向へ身体を元に戻す動作をします」とアドバイスをしているサイトもあるほどだ。
ちなみにこの穴くぐりができる柱は「大仏殿の北東」に位置している。陰陽道では建物の中心からみて北東側は鬼門に当たり、柱に穴を空けることによって邪気を逃す役割を果たしているという説が有力だ。
釈迦の弟子の1人。中国では像を食堂(じきどう)に安置して祀った。日本では堂の前に置いて、その像をなでた手で患部に触れれば治ると平癒するとされている。「なで仏」ともいわれる。
幡(ばん)は寺院の重要な法要のときに使われる「旗」のこと。東大寺では大仏殿前に掲揚され、人々の平和を祈る意味や、魔除けの意味があるといわれている。
ここに掲揚されている幡は、2019年「花鳥風月」をテーマに、全国の傷害のある人から募集し、審査を経て選ばれた64点の作品を8本の幡にデザイン化したものだ。
ゆったりと風に舞う姿は美しい。