【東北ドライブ】雄大な鳥海山の山麓をドライブし、飛島や日本海を眺望する
■4合目の大平展望台で休憩
ホテルキャッスルはコロナ対策もしっかり講じられたビジネスホテルだった。朝食ビュッフェは1階で食事も良かった。山形自動車に入り、途中月山~湯殿山間は一般道「月山花笠ライン」を通るが、また山形自動車道となる。
天気は快晴で、真っ青な空が広がっていた。天気が良ければと思っていた鳥海山(2236m)に真っ直ぐに向かった。「出羽富士」とも呼ばれる整った山容の独立峰(2236m)で、山麓は見事な観光道路「鳥海ブルーライン」が整備されていた。
「大平展望台」(山形県飽海郡遊佐町)で小休憩した。鳥海山の4合目で海抜1000m。近代的な山小屋の「大平山荘」(宿泊・入浴の可能)の駐車場があり、北側は日本海に沈む夕日や海に浮かぶ飛島が眺望できる。南には庄内平野を見下ろし、うっすらと秋田県の男鹿半島も眺望できた。
ここから標高で150mほど上がった5合目に鉾立(ほこだて)駐車場がある。こちらは秋田県に位置し、にかほ市象潟町小滝鉾立の地名が付いている。とにかく大きな駐車場で広い。もちろん無料である。鳥海山登山ルートの象潟口(きさかたくち)でもあり、ハイカーたちの姿が目立った。
■黄葉と紅葉
周辺一帯が黄葉している。展望台の周りが広場になっており、黄葉の中に分け入ることもできる。青い空が広がる快晴だったが、風が少しあって幾分寒い。ただ黄葉の中に身を置くとそれもさほど感じない。
赤い木々ももちらほらのぞく全山黄葉である。紅葉は黄葉を含んだ秋の景観だろう。秋になるとイロハモミジやハウチワカエデ、サトウカエデのほか、ナナカマドやハゼの木などが真っ赤に紅葉するが、モミジの中でもイタヤカエデやイチョウ、カツラ、クロモジ、アズキナシ、コシアブラ、ブナ、ミズナラなどは黄葉する。
紅葉(黄葉)と言った場合、紅葉のほうが黄葉より断然人気が高い。特に京都の紅葉はそれなりにモミジが人工的に植えられているから当然だ。特に山の場合、人の手はほぼ加わっていない。だからこそ赤い木や黄色い木がまだらに植わっている。
山の紅葉風景は赤く紅葉する樹種と、黄色く黄葉する樹種があるからこそ見事な景色を作りだしているのだと思う。山の木が赤く紅葉する木ばかりだったら、真っ赤に染まって目が潰れそう。秋という季節はむしろ四季の柔らかさや寂しげな雰囲気をまとっているのではなかろうか。
秋になるとイロハモミジなどは葉の中に赤い「アントシアニン」と呼ばれる色素がつくられるからだ。一方でブナやミズナラなどはもともと葉の中に黄色い色素(カロチノイド)と緑色の色素(クロロフィル)を含んでおり、秋になると光合成が弱くなり緑色の色素は不要となり消滅し黄色い色素が目立つようになる。
鳥海山は燧ヶ岳(ひうちがたけ、福島県)に次いで東北第2の高さを誇る。海岸からそびえるように立ち上がる独立峰だ。5合目からだと2時間ほどで頂上にたどり着きそうだったが、自分は観光客である。ハイカーとは違う。登ってみたいと思ったが、自重した。
5合目から30分ほど登ったところに異形巨木群がつくる神秘的なエリアが存在するという。山麓北側に位置し、「あがりこ大王」(樹齢300年、幹周り7.62m)などブナ原生林に囲まれている中島台レクリエーションの森がそれだ。
10数カ所から伏流水が湧き出て、約26haの広さを持つ「獅子ヶ鼻湿原」(天然記念物)を形成しているという。この湿原には世界的に貴重なコケが多種多量に群生しているとか。
東北には日本百名山のうち15座がある。2000m級を標高順に並べてみる。このうち岩手山は10年ほど前近くまで行ったが、結局入り口を見つけられず断念。今回の鳥海山はそもそも観光目的だった。
①燧ヶ岳(ひうちがたけ、2356m) 福島県
②鳥海山(ちょうかいさん、2236m) 山形・秋田県
③会津駒ヶ岳(あいずこまがだけ、2133m) 福島県
④飯豊山(いいでさん、2128m) 福島県
⑤岩手山(いわてさん、2038m) 岩手県
⑥吾妻山(あずまやま、2035m) 山形・福島県
酒田港(山形県酒田市)の北西39kmの沖合いに浮かぶのが飛島。よく晴れた日には肉眼で見えるとあるが、この日はうっすらと見えた。この島は山形県有一の有人離島だという。
ウィキペディアによると、2017年時点で3集落210人が定住している。島全体が国定公園(鳥海国定公園)となっている。
■山居倉庫、本間家旧本邸など酒田の歴史を巡る
鳥海山を下りて酒田市に入った。江戸時代から「北前船」交易で栄えた港町・酒田には今も当時の華やかな繁栄の跡が随所に残っている。その1つがこの「山居倉庫」。
明治26年(1893年)に建てられた米穀倉庫で酒田のシンボルである。現在12棟が残り、現役の米穀倉庫として使用されている。1棟は庄内米歴史資料館になっていた。
本間家3代光丘が幕府巡見使の本陣宿として明和5年(1768年)に建設した旧本邸。旗本2000石格式の長屋門構えの武家屋敷。邸内には御座敷や御勝手、樹齢400年以上の赤松などが見られる。
2泊目はあつみ温泉「萬国屋」(山形県鶴岡市温海)。温海川の渓流に沿う湯の町。江戸時代から庄内藩公認の湯役所が設けられ、湯治場として賑わいを見せた。1000年を超える歴史を有する。風雅な土地柄を愛した松尾芭蕉や横山利一、与謝野晶子などの文人墨客が訪れている。
今は10軒足らずの温泉宿が集まっているが、萬国屋はなかでも約300余年の歴史を持っている大型の老舗旅館。業容拡大に伴う設備投資が負担となって2019年2月から古窯(こよう、山形県上山市)の傘下に入り、経営立て直しに取り組んでいる。
小窯は接客や経営手法が全国的に知られ、業界紙の「プロが選ぶホテル・旅館百選」でランキング上位の常連となっている。
萬国屋の自慢の庭園露天風呂の泉質は微弱アルカリ性で切り傷、神経病、リウマチ、婦人病などの効能を持つ。