初めて知った全国知事会の実力=「交付金」「給付金」を緊急提言、特措法・感染症法の改正も誘導

 

全国知事会長の飯泉嘉門徳島県知事

 

ゲスト:飯泉嘉門・全国知事会会長/新型コロナウイルス対策本部長(徳島県知事)
平井伸治・全国知事会新型コロナウイルス対策本部長代行(鳥取県知事)
テーマ:新型コロナウイルス
日本記者クラブ@2021年2月22日

 

全国知事会で新型コロナウイルス緊急対策会議の本部長を務める飯泉嘉門会長(いずみ・かもん、徳島県知事)と、平井伸治本部長代行(鳥取県知事)がリモートで会見。ワクチン接種に向けた都道府県の動き、特措法、感染症法の改正を踏まえた知事の役割、都道府県の施策について話した。

 

 

第1波への対応

 

■交付金、給付金を緊急提言

 

・全国知事会も当初は国が2020年1月30日に新型コロナウイルス感染症対策本部を立ち上げたのに対応して、直ちに新型コロナウイルス感染対策会議を立ち上げた。2月25日に国が基本方針を決めたのに合わせて47都道府県知事が参加する緊急対策本部へと格上げした。

・3月10日に対策本部が開かれ、当時はリーマンショック越え対策として潤沢な融資を用意すればそれでOKだという状況だったが、全国の状況は非常に深刻で、今回は東日本大震災が全国で起こったまさに大災害であるとの認識に基づき、国として「何としても『業』を守る」強いメッセージを出していただくよう求めた。当座の給付、当面の融資を要請した。

・これが4月7日の緊急経済対策に結実した。地方創生臨時給付金(1兆円)、緊急包括支援給付金(1490億円)、持続化給付金の創設につながった。

・これを受けて4月7日に東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に緊急事態宣言、4月17日には全都道府県に拡大された。宣言は5月4日に延長され、5月25日に全面解除された。

・全国知事会は4月17日、地方創生臨時交付金の「休業要請協力金への活用」を緊急提言し、国もこれを容認した。4月30日に西村大臣との意見交換の中でパチンコ店など要請に応じない事例が多発するのに対し、補償・罰則など特措法改正を提言。後(2021年2月3日)の法改正につながった。

 

 

第2波への対応

 

■限定的な「まん延防止等重点措置」も創設

 

・2020年5月19日、国と地方の協議の場が開催され、知事会として地方創生臨時交付金の「2兆円増額」を総理に提言した。20日には2つの交付金の飛躍的増額、雇用調整助成金の上限額および助成率の引き上げや特例期間延長などの緊急提言を行った。

・これは第2次補正予算に反映された。地方創生臨時交付金の2兆円増額、緊急包括支援交付金2.2兆円増額、家賃支援給付金の創設も盛り込まれた。雇用調整助成金の上限額、助成率引き上げ、特例期間延長(9月末まで)も入った。

・Go To トラベル事業の開始時期も8月1日から7月22日スタートとなった。これについても知事会は「全国一律ではなく近隣地域から感染状況を踏まえ段階的な実施」を提案し、「東京発着・在住者を対象外」にすることを盛り込ませた

・7月27日、西村大臣との意見交換で、社会経済活動への影響を考慮し、緊急事態宣言の効果を市区町村単位など限定的に行ったほうが良いのではないかと提言。特措法改正の中で「まん延防止等重点措置」が創設された。

・緊急事態宣言は都道府県単位で出されるが、重点措置は知事が市区町村など特定の地域を限定できるのが特徴。また宣言は感染状況が最も深刻な「ステージ4」に相当するかどうかが目安になるが、重点措置は「ステージ3」(感染が局地的に急速に広がっている場合はステージ2も可能)を想定している。

 

第3波への対応

 

■「新次元の分散型国土の創出」を提言

 

・20年10月13日、国と地方の協議の場で菅義偉首相は「活力ある地方を創ることが菅内閣の最も重要な政策」と述べた。知事会も省庁の地方移転、大企業の地方分散、地方大学の定員増など新次元の分散型国土の創出を提言した。

・11月20日の政府主催・全国都道府県知事会議で、地域を絞った効果的な対策や地方創生臨時交付金のさらなる積み増し(1.2兆円)を提言し、21日には同交付金に「協力要請推進枠」が創設された。

・11月23日には知事会の対策本部で、①「協力要請推進枠」の交付限度額の弾力化②Go To トラベル感染拡大地域の一部除外を要望し、24日の西村大臣との意見交換の結果、店舗数上限2割の撤廃Go To トラベル事業から札幌市、大阪市発を一時除外することを決めた。

・12月20日の対策本部で、年末年始の過ごし方や特措法・感染症法の迅速な改正など緊急提言を取りまとめた。国は23日の政府分科会で、全国知事会の提言をベースに特措法・感染症法改正に向けた議論がスタートした。これは通常国会で改正される。

 

特措法等改正、ワクチン接種に向けて

 

■2月15日に「ワクチン接種特別対策チーム」会合

 

・21年1月7日、東京、神奈川、千葉、埼玉の4都県を対象に再び国家緊急事態宣言が発動された。13日には栃木、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7府県が追加された。飲食店に20時までの時短を要請するとともに、協力金の上限を1日当たり6万円に増額した。

・田村大臣からワクチン接種体制を構築するため知事会長にリエゾン(情報連絡職員)派遣要請があった。2月2日には栃木県を解除し、10都府県については3月7日まで延長となった。2月3日には改正特措法などが成立した。

・2月6日の対策本部で33道府県34名のリエゾンを厚労省、内閣官房へ派遣を決定。さらに中小事業者への一時金の要件緩和を提言。また緊急雇用創出事業の創設も提案した。さらにワクチン接種特別対策チームを新設した。

・2月14日、米ファイザー社ワクチンが承認されるとともに、順次医療従事者への先行接種が始まった。知事会では15日に第1回ワクチン接種特別対策チームの会合を開催、分析担当・システム担当を設置した。この会合には内閣府、厚労省、総務省なども参加し、ワンチーム会合となった。

 

練馬型と地方型

 

■鳥取県では「早期検査、早期入院、早期治療」

 

平井本部長代行(鳥取県知事)は飯泉本部長を受け、全国知事会が先頭に立って提言し内容を固めた改正特措法、改正感染症法のポイントについて、都道府県知事が担う新型コロナ対策の実効性を担保するのが最大の目標であると語った。2月13日施行。

・改正特措法では行政罰の規定や情報共有の強化、誹謗・中傷対策などが定められた。まん延防止等重点措置に基づく営業時間の変更等の要請、要請に応じない場合の命令、命令に違反した場合の過料を「20万円以下」と定めている。

・また、緊急事態宣⾔中の施設の使⽤制限等の要請に応じない場合の命令、命令に違反した場合の過料(30万円以下)を規定しているほか、入院措置に応じない場合又は入院先から逃げた場合の過料(50万円以下)を定めている。

・今回二極化している。どんどん感染が広がるところがなかなか抑えられないまま全国にざあと広がっり、第2次の緊急事態宣言に至った。

・地方の現場の例として鳥取県の場合をご紹介させていただく。鳥取では「早期検査、早期入院、早期治療」を標榜している。濃厚接触者に限らず調査の対象としてPCR検査を行う。その日のうちに家族の検査をする。職場や立ち寄り先も行う。これを手早くやるとどこかで感染拡大を止めることができる。積極的疫学調査としては大事にしなければならない。これをしっかりとやることで変異株の追跡も可能となる。

・陽性者は即日あるいは翌日全員医療機関に入院する。早期入院し、バイタルデータ測定やCT画像診断などしっかりメディカルチェックを受けていただき、重症化リスクを見逃さない。

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