【ウクライナ】ウクライナ親ロシア派支配地域の「一方的独立」を承認=「ユーラシア国家」目指すプーチン大統領
■ロシア、親ロシア勢力の占領地域の独立を承認
ロシアのプーチン大統領は現地時間21日夜(日本時間22日未明)、約55分間におよぶテレビ演説で、ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力が求めた占領地域の独立要求を承認すると表明した。
武力を背景に国境を変更する試みで、2014年のクリミア半島併合に続く措置。ロシアは欧米との関係が一段と悪化する。今回の独立承認で、欧米に背を向け、中国など強権国家との協力を強化する道を選んだ。
プーチン政権はかねて「欧州の国」から「ユーラシア国家」としてロシアの定義を改める動きを強めていた。プーチン政権による決定の背景には、北太平洋条約機構(NATO)の東方拡大がとまらず、米欧への不信感を強めていたことがある。
パトルシェフ安全保障会議書記は21日の安保会議で「米国の目的はロシアの崩壊だ」と主張した。
平和維持を目的に、親ロシア派支配地域にロシア軍を派遣する方針も明らかにした。米欧は反発を強めており、ドイツのショルツ首相はロシアからの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の承認作業の停止を発表。各国は制裁を科す方針だ。
■「ウクライナはNATOの前線基地になる」
プーチン大統領はテレビ演説でウクライナについて、「ウクライナは単なる隣国ではない。我々自身の歴史、文化、精神的空間の切り離しがたい一部なのだ。現代のウクライナは完全にロシア、正確には共産主義のロシアによってつくられた」と述べた。
また米国がなぜロシアを敵にしようとするのかについては「答えはただ1つ。単にロシアのような大きな独立した国家が必要ないからだ」と指摘した。
さらに米国とNATOとの安保協議については、「NATOとの東方拡大停止などの基本的な問題に関する我々の提案には回答がなかった。我が国にとっての脅威の水準は大きく高まる。ロシアは自らの安全保障を確立するための対抗策を講じる完全な権利を持つ」としている。
ウクライナのNATO加盟問題については、「ウクライナがロシアを攻撃するためのNATOの前線基地になる」と主張した。
■欧米は対ロシア制裁発動
バイデン米大統領は21日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談し、ロシアによる親ロシア派占領地域の独立承認を強く非難した。米国人によるロシアが独立承認した地域との新規投資や貿易、金融取引への関与を禁じる大統領令に署名した。22日に追加措置を発表する。
EUも21日、制裁措置をとると表明した。ミシェルEU大統領とフォンデアライエン欧州委員長が連名で発表した。制裁内容は明らかにされていない。
一方、英国のジョンソン首相は「明らかな国際法違反である」とロシアを批判した。またドイツのショルツ首相も同地域の和平のためのミンスク合意に明らかに反するもので、「一方的な合意違反」になると指摘した。