NHKスペシャル「原油高騰」
原油価格の決定権は昔はエクソン、モービル、シェルなどの国際石油資本(石油メジャー)、その後石油輸出国機構(OPEC)に移り、今は市場(マーケット)が握っている。その中でも最も強力なのが最大の消費国でもある米国のニューヨーク商業取引所(NYMEX)だ。原油の売り手、買い手を含め、あらゆる思惑が交錯し、そこで価格が決まっていく。
問題は石油市場と関係のない投機家が市場を動かす最大の原動力になっていることだ。実際に市場を動かしているのは巨額の資産を持つ投機家から資金を集め、それを市場で運用するヘッジファンドだ。番組によると、200社以上のヘッジファンドが活発にトレードしているという。ヘッジファンドにとって、戦争、テロ、暴動など、あらゆるものが投機の材料だ。
番組に登場したクラリウム・キャピタルのピーター・ティール社長によれば、中国バブルや不動産バブルは盛りを過ぎた。これに対し、インドやブラジルなどの経済発展に伴って、原油の供給不安はなくならない。価格高騰を背景に、国家間、石油会社間の資源争奪戦も激化の一途をたどっている。これからの投機対象は原油、それもNYMEXで取引されているWTI(ウエストテキサス・インタミーディエート)が一番。原油バブルは続く。資金を私に預ければ、大きな運用益を約束しますよ、というわけだ。
市場は需要と供給が見合う適正な価格メカニズムの働く場を超えて、暴走し始めている。それを食い止める解決策も見つかっていない。これからどうなるのか。コントロールを失った化け物を止めるのは何か。どうしようもないが、とんでもない化け物に成長した先物市場を監視することだけでもやってみようか、と考えている。