在日米軍再編問題

 在日米軍の再編は今年の日米間の大きな外交課題だ。中間報告が出ており、日米政府間の合意も成立したが、肝心の沖縄県が合意案に反対の立場を貫いており、問題の複雑さを浮き彫りにしている。

 この沖縄に私は行ったことがない。新聞はできるだけ丁寧に読んでいるが、土地勘がないので、分からないことが多い。「なるべく若いうちに自分の足で世界史を固めるべきだ」-ベトナム戦争写真報道で名を馳せた故岡村昭彦氏がどこかで書いていたことを覚えている。自分の目と足で確認し、その問題を考えるのが最低限必要なことだ。なるべく早く行きたい。

 日米両政府が在日米軍再編に関する中間報告で合意したのは昨年10月29日、ワシントンで開いた外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)。最大の焦点は沖縄県宜野湾市にある普天間飛行場を同県名護市にある米軍キャンプ・シュワブの沿岸に移設すること。

 しかし、この合意案には稲嶺沖縄県知事も名護市長も強硬に反対しているのが実情だ。稲嶺知事は1998年、普天間飛行場の代替ヘリポートをキャンプ・シュワブのある名護市辺野古沖に移設する案に反対した大田昌秀前知事に代わって就任。「軍民共用」「15年の使用期限」の2条件を付けた上で「辺野古沖埋め立て案」を受け入れた。

 今回日米双方が合意したのは同じ辺野古でも「沿岸部」への移設案。この沿岸部案では陸上部分も含まれ、文化財保護の問題も出てくるという。現地を知らないから、この辺野古の「沖合い埋め立て」と「沿岸部」の違いが今ひとつ分からない。「埋め立て」が認められて、「沿岸部」が認められないのはなぜなのか。

 稲嶺知事は昨年12月20日、日本記者クラブで会見した際、「辺野古埋め立て案が実現不可能なら、辺野古沿岸部案はさらに超不可能な案だ」と受け入れ拒否の考えを強調した。埋め立て案以外なら県外移設しかないとの姿勢を確認したものだ。知事は「(埋め立て案)を受け入れる方針で全力で取り組んできた。大変な思いで積み重ねてきたのに、別の提案が出てきた。これは次元が違う。納得できない」と指摘した。

 私には原則論のように聞こえたが、知事の言うように、「うちなんちゅう」(沖縄人)と「やまとんちゅう」(大和人)との間には微妙な意識の差があるのだろう。この差は永久に乗り越えられないものだろうか。

 地元関係自治体が軒並み拒絶反応を示している中間報告。政府の地元説得は難航しており、予定通り、今年3月までに最終報告を策定できるかどうか極めて不透明な情勢だ。

 テロや大量破壊兵器など新たな脅威に対処するため、米国が世界的規模で進める米軍兵力の見直しが米軍再編。IT技術の進展など軍事革命の成果を基に、機動展開力に優れた態勢に変革することを目指している。冷戦の名残を残す在欧米軍を中心に兵力を削減し、米本土の防衛強化を狙っている。在日米軍再編は2003年11月から本格協議が始まった。

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