「地球を考える会」フォーラム

 「地球を考える会」(座長・有馬朗人元東大総長、元文相)主催のフォーラム「世界と日本―温暖化対策の方向性を探る」が泉ガーデンギャラリーで開催された。地球温暖化防止を目指して有識者やマスコミ関係者らで結成した会。同会のフォーラム参加は初めてだったが、予想通り、メッセージは「原発推進」だった。

 有馬座長による基調講演は「環境と資源の有限性―原子力と新エネルギーを考える」。同座長は①地球が温暖化問題に直面しているのはほぼ確実②化石燃料は否応なく枯渇する(石油・天然ガスは2050年ごろ、石炭は2100年ごろ)③新エネルギー(太陽光・風力など)は有望で理想的だが、十分ではない-と指摘した。

 また、地球温暖化はとりわけ人間の出す二酸化炭素(CO2)が原因であるとし、化石燃料に取って代わるものはCO2を出さない原子力しかないと主張。新エネルギーは総発電量の7%程度しか占めないにしても、自腹を切ってでも絶対にやるべきだとも指摘した。

 ただ原発推進のネックは廃棄物処理場が決まっていないことと軍事利用の野望を持っている国が存在すること。これについてはフィンランドとスウェーデンでは廃棄場の場所が決まったとし、国民合意を取り付ける地道な努力を続けるしかないと強調。原子力の平和利用のためには国際エネルギー機関(IEA)を強化することで対応しなければならないと説いた。

 第2部はパネルディスカッション「国際交渉に向け問われる日本の戦略-どうする25%削減」。有馬座長のほか、茅陽一財団法人地球環境産業技術研究機構副理事長・研究所長、白井克彦早大総長、並木正夫東芝代表執行役副社長、山下ゆかり財団法人日本エネルギー経済研究所地球環境ユニット総括リーダーが参加した。

 鳩山首相が国連総会などで宣言したのは2020年を目途とする日本の温室効果ガス排出量の中期削減目標を1990年比で25%減とすること。「2度の温度上昇に対応して25%削減を宣言したが、厳しい目標だ。削減のために掛かるお金が大きい。ガソリンの暫定税率で1リットル当たり25円。それが100円程度になる。これをどうするか」(茅氏)

 「温暖化問題は国境がない問題。全体が関係している。炭素にプライスを付けることでシステム化を図る」(白井氏)。炭素税などのツールを作ることで国民的合意を図る道筋が付けられつつあるようだ。25%削減ののろしが華々しく打ち上げられたものの、その後、日本国内では政策を共有できる議論が巻き起こっていないのが実情だ。この日のフォーラムはそれに対する苛立ちの表明のようにも聞こえた。

 

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