竹が鳴る

 丹波の生家に行くと、必ずしなければならないことの1つがお墓の掃除だ。昔の墓だから先祖代々の石碑がずらっと建っている。最近でこそ火葬だが、20年ほど前までは土葬が普通だった。1人につき1本の石碑が建てられた。

 昨年の暮れは例年より早く、多く休みを取った。25日に東京を出発し、午後11時30分ごろ現着した。翌日の昼、墓掃除に行った。風が強かった。そのとき、竹の鳴る声を聞いた。キュー、キューという声だった。その音が耳に残っていて、どういうわけかときどき聞こえる。

 郷里には18歳まで育ち、東京に家を構えてから現在に至るまで、何十回と帰り、その都度、墓掃除もしたはずなのに、竹の鳴る声を聞いたのは初めてのような気がする。ザワザワではなかった。録音しようと思ったときには、もう聞こえなくなっていた。チャンスは前髪だ。

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