守成の将軍『徳川秀忠』

『徳川秀忠』(徳間文庫)

書名:『徳川秀忠』新装版下
著者:戸部新十郎
出版社:徳間書店・徳間文庫(2010年8月15日初版)

「この男、凡将か、知将か?守成の将軍の生涯を描く」-2011年大河ドラマ『江-姫たちの戦国』の時代背景を読む-と文庫の帯にある。8月初旬、郷里の本屋の店頭でたまたま見つけ、毎週見ているNHKドラマをより楽しめるかなと思って上巻を買った。上巻だけで750ページ。東京に戻ってきてから買った下巻は742ページ。とにかく長い。1カ月もかけて少しずつ読んだ。

出来不出来はあるにしても、どの本もプロが書いているだけに、それなりに面白いから困る。もちろん面白そうだから読もうとするのだが、面白い本を読みだすと、それに時間をとられて、他のことができない。もっと読むべき本を読めない。一生の時間は限られているのだから、これはゆゆしきことだ。自分の読書遍歴を振り返ってみて、いかにどうでもいい本ばかり読んできたのかと時々考える。今から嘆いても始まらない。心が求める本を読んでいくしかない。

徳川幕府15代のうち、初代家康はもちろん知っているが、次は3代家光に飛び、2代については大河ドラマ「江」を見るまで知らなかった。後も5代綱吉、8代吉宗、そして一気に最後の15代慶喜まで飛ぶ。関心がなかっただけだが、それにしても2代将軍秀忠の影は薄かった。武将としての実績もなく、むしろ関ヶ原の合戦には遅参するなど、評判は悪い。

しかし、考えてみると、徳川幕府が15代も続いたのは創業者の家康ではなく、それを継いだ秀忠の統治能力が優れていたからであるはずだ。戦闘能力が強く求められた戦時から天下統一を成し遂げ、戦のない平時に求められる能力は自ずと違う。時代が求めた人物なのだろう。秀忠を「守成の後継者」(創業を受け継ぎ事業を守る後継者)と見抜いた家康はえらい。

家康や秀忠は中国唐王朝第2代皇帝で、名君と讃えられる太宗(在位627-649)の言行録である『貞観政要』(じょうがんせいよう)を繰り返し読んでいた。本書の中でも問答が出てくる。その中に「守成は創業より難し」という言葉が書かれているという。秀忠はまさに「守成の将軍」だ。

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