『消えた女』

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書名:『消えた女』彫師伊之助捕物覚え
著者名:藤沢周平(1927-1997)
出版社:新潮社(新潮文庫、昭和54年=1979=12月立風書房より刊行)

自宅近くのブックオフには思い出したように行く。ベッドの中でもう1年ほど読み続けているのが『真田太平記』。お目当ての最終巻(12)は買ったが、つい近くにあった藤沢周平に目が止まった。それがこれだ。新趣向の捕物帖だという。

シリーズ全3巻の第1作だから、うまくいけば3冊楽しめる。用心棒シリーズは4作だった。取りあえずこれを買ったが、さすが時代小説の名手・藤沢周平。話は暗く、重々しく、またまがまがしいのだが、期待にたがわぬ読み応えだ。書かなければならない原稿には手が付かないまま、ベッドに入ってから何時間も、トイレに座っても、食事の合間もいつの間にか読みふけっていた。

「版木彫り職人の伊之助は、元凄腕の岡っ引き。逃げた女房が男と心中して以来、浮かない日を送っていたが、弥八親分から娘のおようが失踪したと告げられて、重い腰を上げた。おようの行方を追う先々で起こる怪事件。その裏に、材木商高麗屋と作事奉行の黒いつながりが浮かび上がってきた・・・」(裏表紙解説)

最近ちょっと浮気して読んだ宇佐見真理『さらば深川』(髪結い伊三次捕物余話)も同じような捕物帖だ。大岡忠相などとは違った時代物に惹かれる自分がいる。

小説は確かに面白いし、人情の心理や真理が存在すると思うが、自分の書くジャーナリズムやノンフィクションとは一線を画するから、なるべく読まないようにしている。しかし、気分や気持ちがつい小説に近づいているのも確かだ。やはり、心には素直に従うしかないのかもしれない。

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