「理念は正しいものの、実行は不十分」なアベノミクス

会見するフェルドマン氏

会見するフェルドマン氏

 

テーマ:2014年経済見通し
会見者:ロバート・フェルドマン モルガン・スタンレーMUFG証券マネージング・ディレクター
(チーフエコノミスト兼債券調査本部長)
2014年1月27日@日本記者クラブ
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日本記者クラブは毎年、年頭にその年の経済見通しをエコノミストに開陳してもらう記者会見を開催しているが、フェルドン氏は常連の1人だ。

同氏は昨年も登場。前年末に安倍晋三自民党政権がアベノミクスの御旗を打ち立て、華々しくデビューしたことを受け、アベノミクスにより「日本経済は変われるのか」との問題意識に対し、「YES」と言い切った。

1年後の会見でフェルドマン氏は「いい方向には動いている。アベノミクスの哲学が少しはっきりしてきた」と指摘。まだ「変われた」とは言えないまでも、「変わろうとする方向に動いている」とは言える段階に入ったとの見立てだ。

同氏は今年の世界経済を3.4%成長と予想した。米国2.6%、欧州0.5%、日本1.3%、エマージング5.0%と見ている。昨年の2.9%から若干加速する見通しだ。

その見通しが実現するかどうかのカギを握るのは以下の5つだ。成長の3分の2以上が先進国で、新興国は攪乱要因としている。

①米国=QEから信頼し得る金利のフォワード・ガイダンスへ移行できるかどうか(現状評価・順調)
②日本=デフレから穏やかなインフレへ移行できるかどうか(さらなる努力)
③欧州=金融分断化から信頼し得る銀行同盟へ移れるかどうか(不十分)
④中国=国営企業とレバレッジ主導の成長から改革主導の成長に移行できるか(さらなる努力)
⑤新興国市場=破綻した伝統的な成長モデルから持続可能な新しい成長モデルに移れるかどうか(不十分)

今年の日本経済の最大の焦点は何と言っても4月の消費税増税の影響。日本政府も4-6月が景気落ち込みを予想しているが、7-9月にはドーンと回復すると予測。それに対し、モルガンスタンレーは落ち込みは7-9月だけではなく、もう1四半期か1.5四半期は長引くとみている。

その違いが年度景気見通しの差に表れた。「今議論しているのは、消費税引き上げの影響があるかないかではなく、影響がどれだけ長引くかだ」(フェルドマン氏)。ただ、官民の成長見通しの差は大きいものの、重要なのは成長率よりも、「2%インフレ」を目指すアベノミクスが成功するかどうか。デフレを脱却できるかどうかがポイントだと指摘した。

アベノミクスについて同氏は、「成長はイノベーションが基本」との理念は哲学的に正しいと評価しながらも、「財政支出や規制緩和など多くの面で既得権益槽に切り込めておらず、構造改革も進んでいない」と厳しい評価を下した。

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