福井良いとこ味なとこ

新しいJR福井駅

新しいJR福井駅

 

取材で福井県に行った。東海道新幹線を使うか、空路で行くか迷ったが、訪問先のロケーションを考えた結果、飛行機を使うことにした。福井空港もあるが、定期便が飛んでおらず、結局、隣の石川県の小松空港を使うのが一番便利だった。

小松空港から福井まで京福バスが連絡バスを運行しており、北陸自動車道を通れば1時間で着く。取材先はちょうど小松と福井市の中間に位置していた。駅前のホテルに泊まるので、福井市に直行した。JR福井駅は高架駅化され、真新しかった。

来年春には北陸新幹線の長野-金沢間が開業し、その10年後には金沢-敦賀間も営業を始めるという。福井市はその中間にあり、高架駅化はそれをにらんだものだという。

越前の国を5代100年にわたって支配したのは戦国大名の朝倉氏。しかし、その朝倉義景は天正元年(1573)、織田信長に滅ぼされる。信長から越前統治を任せられたのが戦国武将・柴田勝家。北庄(現福井市)は勝家が天正3年に築いた城下町だ。

 

駅前で見掛けた「銘木店」

駅前で見掛けた「銘木店」

 

福井県の人口は80万人。福井市には3分の1の26万人が住む。とは言っても市域が広く、人口密度は低い。東京や大阪などと比較すると、駅前も閑散で、実にのどか。田舎に来た気分を味わえる。ビルの谷間に見つけたのは銘木店。店の中に材木などが並んでいる。地方ならではの店だ。

 

福井県工業技術センター

福井県工業技術センター

 

ホテルに荷物を預けて向かったのは福井県工業技術センター。駅前からバスで20分ほどかかった。遠かった。時間があったのでバスにした。地元の匂いを感じるのはバスに乗ったり、自分の足で歩き回るにかぎる。県内中小企業向けに工業技術指導をしている県の施設だ。

 

宇治金時

宇治金時(ユトリ珈琲店本店)

 

福井県内産業の現状について、いろいろ話を聞いて、施設を案内してもらった。たっぷり2時間。外に出たら、やはり暑かった。疲れたので、空港道路沿いにあった店で休憩した。たまたま入ったら、とてもおしゃれなコーヒーだった。福井市内に何店か展開しているユトリ珈琲店の本店(福井市石盛町)だった。

こだわりコーヒーが売りのようだが、暑かったのでメニューにあった「宇治金時」を頼んだ。500円。意外な場所で意外なものを食べる。これぞ旅の醍醐味である。

 

道路脇の木にしがみついて鳴いていたアブラゼミ

道路脇の木にしがみついて鳴いていたアブラゼミ

 

風にそよぐ稲穂を眺めていたら、何とも心が落ち着く

風にそよぐ稲穂を眺めていたら、何とも心が落ち着く

 

福井まで1駅だが、普通電車は1時間に1本

福井まで1駅だが、普通電車は1時間に1本

 

帰りもバスを使うつもりだったが、市街に向かうバス停を見付けられなかった。仕方がないので、通り掛かりの土地の人に聞いて、田んぼの中の農道を30分ほど歩き、JR北陸本線の森田駅にたどりついた。福井はコシヒカリの生まれた土地だ。

 

梵「ときしらず」

梵「ときしらず」

 

「ホテルルートイン福井駅前」最上階にある「大浴場」で汗を流し、福井在住の知人と旧交を改めた。案内されたのが駅前商店街の一角にある「煙や」(福井市中央)。そこで飲んだのが地酒「梵」(ぼん)だった。

コトバンクによれば、サンスクリット語で、「けがれなき清浄」「真理をつく」を意味し、英語の「born」(誕生)にもかけて命名されたという。全量無添加の純米酒で、蔵元は万延元年(1860)創業の加藤吉平商店(福井県鯖江市)。

そう言えば、翌日行った鯖江市の駅舎に「心に響く感動-日本酒 日本の酒文化 梵 BORN」の看板が掛かっていた。昨夜、福井市で飲んだ酒だなと思ったが、蔵元が鯖江市だとは考えなかった。

 

花垣も試してみる

花垣も試してみる

 

こちらも歴史では負けていない。金物屋としての創業は享保18年(1733年)で、酒造りを始めたのは明治34年(1901)。それでももう100年以上酒を造っている。蔵元は南部酒造場(福井県大野市)。純米を完全発酵させた超辛口。すっきりした味わいだった。

 

アスパラガスの揚げ物が実にうまい

アスパラガスの揚げ物が実にうまい

 

旬香酒燈「煙や」は、地魚の刺身はもちろんだが、頼んだ一品がどれも工夫が凝らしてあって、創作料理。アスパラガスをてんぷらのように揚げ、それをマヨネーズに付けていただく。これが絶品だった。

 

厚揚げも

厚揚げも

 

何ということもない厚揚げだが、ネギとかつおぶしをまぶして食べるといい味になる。この店の一押しの「赤鶏のたたき風」や「若狭牛の陶板焼き」はさぞ美味にちがいない。

 

〆はおろしそば

〆はおろしそば

 

最後はもちろん「越前おろしそば」。ウィキペディアによると、主に県北の嶺北地方で食されるという。福井県はそばどころとしても有名だ。2013年都道府県別そば収穫量ランキングによれば、1位は北海道で、別格の1万5100トン、福井県は8位で1120トン。

知らない土地に行けば、知らない物を食する。これに勝る喜びはない。知らない土地に、知っている人がいて、その人と歓談しながらひとときを過ごせることほどの幸せはない。とても幸せなひとときだった。

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