「トランプ現象は一過性ではない」

 

トランプ現象について語る渡辺靖慶大教授

トランプ現象について語る渡辺靖慶大教授

 

ゲスト:渡辺靖慶応義塾大学SFC教授
テーマ:トランプ現象と米大統領選
2016年5月12日@日本記者クラブ

慶応大学の渡辺靖教授が「トランプ現象と米大統領選」と題して話をし、記者の質問に答えた。

カラスの鳴く日がなくても、「トランプ大統領」の可能性に関するニュースを聞かない日はない。めでたいニュースならともかく、彼の過激な発言とそれを生む世界観には熱烈な支持と強烈な批判が入り交じり、既に米国だけでなく、世界を大きく揺るがせている。米国の場合、少々の揺れでも実害が出てくるから迷惑な話だ。

世界は多極的かつ多様性に富んでいるにもかかわらず、米国の内政が国際社会を震撼させる構造にあることを思い知らされた。プア・ホワイトの支持を得た不動産王の価値観が、世界にもたらすのは悲劇なのか喜劇なのか。

ドナルド・トランプ氏がベルルスコーニ(実業家の元イタリア首相)になるのか、それともムッソリーニ(独裁者だった元イタリア首相)になるのか分からないのが不気味である。

米国社会を支えてきた多数派の白人中間層は長期減少傾向を示し、2043年には半分を割り込む見通しだ。親の世代が見たアメリカンドリームを見られない彼らは閉塞感にとらわれている。こうした時代にアウトサイダーや政治的な”変わり者”に有権者の関心が殺到する光景は1990年代から見られ、これが「トランプ現象」の本質だと渡辺教授は指摘する。

それゆえ、「トランプ現象」は一過性の現象ではなく、トランプ的なものが求心力を持つ可能性は今後も続く可能性があると同教授はみる。先の見えない時代に強いリーダーを求めるのは世界的な傾向でもある。

トランプ氏は「リアリティーテレビ番組」の司会で名前を売った人物。役者が演じるドラマではなく、一般人の現実の様子やプライバシーを撮ったホームビデオで構成される低予算のテレビ番組。

トランプ氏は「ワシントン対自分」というリアリティー番組の主役を演じているようなもので、「トランプがどんなことを言うのか、どんなことをやるのかが視聴者の関心を集めている」。メディアがトランプ氏を批判すればするほど、逆にトランプ支持が拡大する現象が起きているという。

面白さで大統領になった人物が予見不可能な政治を行えば、世界は大混乱に陥ることのは必至だ。恐ろしいことが起こらないよう天に祈るしかないようだ。

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