「ポピュリズム」を考える①

  とにかく次から次へと驚天動地のニュースが続発する。尖閣諸島沖での中国漁船と日本巡視船衝突事件、大阪地検特捜部主任検事による証拠改ざん事件、記録尽くめの今夏の猛暑・酷暑・炎暑などなど。日本国内ではどれも今年の10大ニュース入りは確実だ。

 ニュースを追いかけるほうも大変だ。どれもこれも、無関心ではいられない。影響がいずれ、いろんな形で自分の生活にも跳ね返ってくるからだ。向こうから忍び寄られるよりも、とにかくこちらから問題の所在を確認・把握し、最悪の場合も想定の上、必要なことには手を打っておかなければならない。先手必勝である。

 6日のニュースも尖閣諸島の流出ビデオ問題で持ち切りだ。衝突場面の映像は流出が明らかになった5日に観たが、6日改めて5本全部を観た。やはり、こういうものは観ておかなければいけない。今後、繰り返し流されることになるからだ。

 6日午前放映のBS朝日「激論!クロスファイア」で、キャスターの田原総一朗氏が「世界の潮流がここへきて変わってきた」という発言をした。世界中で「ポピュリズム」が幅を利かせ始めたことを指しているようだ。田原氏は「大衆迎合主義」という意味で使った。


           (6日、BS朝日「激論!クロスファイア」)

 日本の政治学者やマスコミが「ポピュリズム」という言葉を使う場合、大体が「単なる人気取り」や「大衆迎合政治」、あるいは「反知性的な政治運動」を意味していることが多いようだ。相手を非難し、罵る場合に否定的に使う。コメンテーターの星浩朝日新聞編集委員とゲストの枝野幸男民主党幹事長代理も同じ意味で使っていた。

 日本の民主党政権のばらまき政策が国民の人気取り政策そのものであるほか、オバマ米民主党政権を今回の中間選挙で歴史的敗北に追いやった共和党支持のティーパーティー運動もポピュリズムの台頭と捉えられる。さらにはベルジェーエフ・ロシア大統領による国後島訪問も、2012年の大統領選を意識した人気取り政策の一環との理解だ。

 米国もロシアも日本も同様な政治状況が起きているという認識なのかもしれない。「反日意識」の背後に潜む「反政府意識」に神経を尖らせている中国政府だって、国民の不満をガス抜きするため、否応なくポピュリズム政治を取らざるを得ない面もあるのではないか。

 「唯一引っ張っていたアジアの成長も鈍化し、世界が同時不況に入りつつある。すべての人を満足させられない時代になってきた。ポピュリズムからの脱却を考えなければならない」「各国とも自分の国の生き残りを賭けている。そろそろ局面を変えていく必要がある」という認識で3人は一致していた。

 このテーマはしっかり考えなければいけないなと思い、ネットで調べ始めると、大衆迎合政治という意味で使っている「ポピュリズム」という言葉自体の意味が本来の意味と違っていることを知った。これからこの言葉はいろんな局面で使われる。そのためにも、正確な理解が必要だ。

■「ポピュリズム」(出典:小学館デジタル大辞泉・kotobank)

①19世紀末に米国で起こった農民を中心とする社会改革運動。人民党を結成し、政治の民主化や景気対策を要求した

②一般に、労働者・貧農・都市中間層などの人民諸階級に対する所得再配分、政治的権利の拡大を唱える主義

③大衆に迎合しようとする態度。大衆迎合主義

 日本ではもっぱら、「大衆迎合主義」という意味で使われているが、少なくても政治学用語としてはそうではなさそうだ。ちなみに手持ちの「The COLLINS CONCISE DICTIONARY OF THE ENGLISH LANGUAGE」(second edition)には「populist」の項目に米人民党メンバーとしての意味の次に、「a politician or other person who claims to support the interests of the ordinary people」(普通の人々の利益を支持するよう主張する政治家あるいはその他の人々)と書かれている。

 「CHAMBERS ENGLISH DICTIONARY」にも「one who believes in the right and ability of the common people to play a major part in governing themselves」と説明されている。ポピュリズムには大衆迎合主義の意味はなく、正しくは「大衆による反エリート政治運動」のようだ。ひとまず、これだけは理解しておきたい。

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